施設探しは、情報収集や見学だけでは見えてこない部分があります。この記事では、施設選びにおいて多くの家族が直面する典型的な状況と、その解決策を事例形式でご紹介します。よくあるケースを分かりやすくまとめることで、あなたの施設選びのヒントになれば幸いです。
よくあるケース①
認知症の親を施設に入居させるケース
認知症の親を施設に入居させる決断は、多くの家族にとって心理的なハードルが高いものです。特に「親を施設に入れる」という罪悪感と、現実的な介護の限界との間で葛藤することが一般的です。
よくある悩みと解決のポイント:
- 罪悪感への対処:専門的なケアが受けられる環境に移ることが、結果的に本人の安全と尊厳を守ることにつながるという視点を持つことが大切です。
- 施設選びの重要ポイント:認知症ケアの方針や具体的なアプローチを確認すること。スタッフが認知症の方の言動を否定せず、その人の世界観を尊重する姿勢を持っているかがカギとなります。
- 入居前の試行利用:可能であれば、日中のデイサービスや短期入所を利用して、本人の適応度を確認することで、入居後のギャップを減らせます。
多くの場合、適切な環境を選べば、当初の不安が杞憂に終わることも少なくありません。認知症の方が新しい環境で役割を見つけ、生き生きと過ごすようになるケースも数多く報告されています。
よくあるケース②
将来の状態変化を見据えた施設選び
現在は比較的自立度が高くても、高齢者の状態は予測不能に変化することがあります。多くの家族が直面するのは、「今の状態」と「将来起こりうる状態変化」のどちらに重点を置いて施設を選ぶべきかという問題です。
よくある悩みと解決のポイント:
- 医療体制の確認:特に持病がある場合、急変時の対応体制や医療機関との連携体制が整っているかを確認することが重要です。
- 退去条件の確認:「どのような状態になったら退去が必要か」を事前に明確にしておくことで、予期せぬ退去要請に慌てることを避けられます。
- 段階的なケア体制:同一法人内で異なるレベルのケアを提供している場合、状態変化に応じて住み替えができる「継続的ケアコミュニティ」型の施設も選択肢の一つです。
実際に、入居後に状態が変化しても対応できる施設を選んでいたことで、転居のストレスなく安心して過ごせているというケースは少なくありません。将来を見据えた選択が、長期的な安心につながります。
よくあるケース③
立地と訪問のしやすさを重視したケース
施設の設備やサービスに目が行きがちですが、実際には家族の訪問頻度が入居者の適応や満足度に大きく影響することがあります。特に仕事や家庭との両立を図りながら親の介護に関わる世代にとって、通いやすさは重要な条件となります。
よくある悩みと解決のポイント:
- 訪問の現実性を考慮:理想の施設が遠方にある場合、「月に何回訪問できるか」を現実的に考えることが大切です。
- 日常的な小さな訪問:立派な設備の施設に月1回長時間訪問するよりも、簡素でも近くて週に数回気軽に顔を出せる環境の方が、入居者の安心感につながるケースが多いです。
- 緊急時の駆けつけやすさ:体調不良や急変時にすぐに駆けつけられる距離かどうかも、重要な判断材料となります。
家族の訪問頻度が高い入居者ほど、施設スタッフとのコミュニケーションも円滑になり、個別のニーズにも対応してもらいやすくなる傾向があります。訪問のしやすさは、入居後の生活の質に大きく影響する要素と言えるでしょう。
よくあるケース④
本人の優先順位・価値観を尊重した施設選び
長年の人生で形成された価値観や習慣は、高齢になっても大きく変わることはありません。施設選びにおいて、本人にとって「何が最も大切か」を尊重することが、入居後の満足度を左右します。
よくある悩みと解決のポイント:
- 本人の優先順位の把握:食事、プライバシー、活動、交流など、本人が生活の中で特に重視する要素を明確にすることが大切です。
- 趣味や特技の継続:長年続けてきた趣味や特技を継続できる環境があるかどうかも、生きがいの維持に重要です。
- 生活スタイルの尊重:早起きの習慣がある方、自分のペースで過ごしたい方など、個人の生活リズムがどこまで尊重されるかを確認することも重要です。
例えば、食事へのこだわりが強い方の場合、試食をして食事の質を確認することが有効です。また、プライバシーを重視する方には個室の確保が、社交的な方には共用スペースの充実が決め手となることが多いでしょう。
よくあるケース⑤
家族間で意見が分かれる
複数の家族で親の施設を選ぶ際、それぞれが重視するポイントが異なり、意見がまとまらないケースは非常に一般的です。このような状況をどう乗り越えるかも、施設選びの重要な課題となります。
よくある悩みと解決のポイント:
- 優先順位の明確化:家族それぞれが重視するポイントをリスト化し、優先順位をつけることで、話し合いの基盤を作ります。
- 役割分担の設定:施設見学や情報収集、本人との相談など、プロセスごとに得意な家族が担当することで、効率的に進められます。
- 長期的な支援体制の検討:入居後の訪問や緊急時の対応など、家族間で役割分担を決めておくことで、持続可能な支援体制を築けます。
施設選びのプロセスそのものが、家族の結束を強めるきっかけになることも少なくありません。異なる視点からの意見を尊重し合うことで、より良い選択につながるケースも多いです。
施設選びで成功するためのポイント
これらのよくあるケースから見えてくる、施設選びで成功するためのポイントをまとめました。
1. 本人の意向を最大限尊重する 可能な限り、入居予定の本人の希望や価値観を施設選びに反映させましょう。認知症などで本人の意思確認が難しい場合も、これまでの生き方や好みを考慮することが大切です。
2. 複数の視点で施設を評価する 設備、スタッフの対応、食事、医療体制、立地など、様々な角度から施設を評価しましょう。一つの要素だけで判断せず、総合的に見ることが重要です。
3. 将来の変化を想定する 現在の状態だけでなく、将来的な介護度の変化や健康状態の変化にも対応できる施設かどうかを確認しましょう。「終の棲家」として長く過ごせる環境かどうかも重要なポイントです。
4. 家族の関わり方を考慮する 訪問のしやすさや、家族としてどのように関わり続けられるかも重要な判断材料です。無理なく継続的に支援できる環境を選びましょう。
5. 体験入居や試験的利用を活用する 可能であれば、短期間の体験入居やデイサービスとしての利用など、事前に施設の雰囲気や対応を体験する機会を設けましょう。
施設選びには正解も不正解もなく、それぞれの家族にとって最適な選択があるだけです。ここでご紹介したよくあるケースを参考に、ご家族の状況に合った施設探しを進めてください。何より大切なのは、本人と家族が納得できる選択をすることです。
※施設選びでお悩みの際は、尾形老人ホームアドバイザーにご相談ください。多くの方々の施設選びをサポートしてきた経験から、あなたのご家族に合った施設選びのお手伝いをいたします。年中無休で8時〜20時まで対応しておりますので、お仕事帰りのご相談も可能です。