老人ホームや介護施設を探す際、専門用語や略語が多く使われていて戸惑うことはありませんか?「特定施設」「ユニットケア」「看取り加算」など、介護の世界には独特の言葉が飛び交います。この記事では、施設選びで知っておくと役立つ専門用語や略語を分かりやすく解説します。知識を身につけて、自信を持って施設選びができるようになりましょう。
施設の種類に関する用語
まずは施設の種類や特徴を表す言葉について解説します。パンフレットや説明で頻繁に目にする用語を理解しておきましょう。
特定施設入居者生活介護(とくていしせつにゅうきょしゃせいかつかいご) 介護保険が適用される有料老人ホームなどを指します。施設内のスタッフによる介護サービスが受けられ、外部の介護サービスを利用する必要がありません。「特定施設」と略されることも多いです。
ユニットケア(ゆにっとけあ) 少人数(通常10名程度)のグループ単位で、家庭的な雰囲気の中で介護を行う方式です。大人数での集団ケアより、個別性の高いケアが可能になります。特別養護老人ホームやグループホームで採用されています。
従来型(じゅうらいがた) 大人数を一括してケアする方式で、多床室(複数人で一つの部屋を使用)が基本となります。ユニットケアに比べて費用は抑えられますが、プライバシーや個別ケアの面では制限があります。
地域密着型(ちいきみっちゃくがた) 原則として、その市区町村の住民のみが利用できる小規模な施設です。定員は29名以下で、住み慣れた地域での生活継続を支援することを目的としています。
看取り指針(みとりししん) 終末期のケア方針を定めたもので、看取りに対応可能な施設が作成しています。医療的対応の範囲や家族との連携方法などが記載されています。「看取り加算」を取得している施設では、終末期ケアの体制が整っていることを示します。
介護サービスに関する用語
施設での生活を支える介護サービスについて、よく使われる専門用語を解説します。
ケアプラン(けあぷらん) 正式には「介護サービス計画書」といい、入居者一人ひとりの状態や希望に合わせた介護サービスの計画書です。施設のケアマネジャーが中心となって作成し、定期的に見直されます。
ADL(えーでぃーえる) Activities of Daily Living(日常生活動作)の略で、食事、排泄、入浴、移動、着替えなどの基本的な生活動作のことを指します。入居者の自立度を表す指標として用いられます。
IADL(あいえーでぃーえる) Instrumental Activities of Daily Living(手段的日常生活動作)の略で、買い物、料理、金銭管理、服薬管理などのより高度な生活動作を指します。認知機能の評価にも関わります。
BPSD(びーぴーえすでぃー) Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(認知症の行動・心理症状)の略で、徘徊、幻覚、妄想、興奮などの認知症に伴う症状を指します。施設でのケア方針に大きく関わります。
身体拘束ゼロ(しんたいこうそくぜろ) 安全のためという名目で行われていた、ベッド柵や車いすのベルトによる拘束などを行わない取り組みです。現在では原則として身体拘束は禁止されており、代替策を講じることが求められています。
ターミナルケア(たーみなるけあ) 終末期のケアのことで、医療面だけでなく精神的ケアも含めた総合的なサポートを指します。「看取りケア」とも言われます。
制度や費用に関する用語
介護保険制度や費用に関連する専門用語も理解しておくと役立ちます。
要介護認定(ようかいごにんてい) 介護保険サービスを利用するために必要な認定で、要支援1・2、要介護1〜5の7段階に分類されます。入居できる施設の種類や利用できるサービスの範囲が、この認定によって決まることが多いです。
居住費(きょじゅうひ) 施設での居室利用料で、介護保険外の自己負担となります。「家賃」と表現される場合もあります。
食費(しょくひ) 食事の提供にかかる費用で、こちらも介護保険外の自己負担です。低所得者には「補足給付」という軽減制度があります。
管理費(かんりひ) 共用部分の維持管理や事務費などに充てられる費用で、施設によって含まれる内容が異なります。明細を確認しておくとよいでしょう。
入居一時金(にゅうきょいちじきん) 入居時に一括で支払う費用で、「入居金」「前払金」とも呼ばれます。返還条件や償却方法は施設によって異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。
利用料減免制度(りようりょうげんめんせいど) 低所得者向けの費用軽減制度で、「特定入所者介護サービス費」(補足給付)などがあります。所得や資産状況によって対象となるか判断されます。
医療ケアに関する用語
施設での医療的対応を理解するための用語も押さえておきましょう。
医療連携体制(いりょうれんけいたいせい) 協力医療機関や訪問看護ステーションなどと連携し、医療的ケアを提供する体制のことです。24時間対応可能かどうかも重要なポイントです。
看護体制加算(かんごたいせいかさん) 一定の基準を満たした看護体制を整えている施設が取得できる介護報酬の加算です。看護師の配置人数や時間帯によって加算の種類が分かれます。
経管栄養(けいかんえいよう) 口から食事を摂取できない方に対し、胃ろうや鼻腔チューブを使って栄養を摂取する方法です。対応可能かどうかは施設によって異なります。
インスリン注射(いんすりんちゅうしゃ) 糖尿病の方へのインスリン投与を指します。自己注射が難しい場合、施設スタッフによる対応が必要となりますが、可能かどうかは施設によって異なります。
褥瘡ケア(じょくそうけあ) 床ずれ(褥瘡)の予防や処置を指します。長時間の臥床が必要な方には特に重要なケアです。予防のための体位変換や専用マットレスの使用なども含まれます。
認知症ケア加算(にんちしょうけあかさん) 認知症の方へのケアに特化した体制を整えている施設が取得できる加算です。専門的な研修を受けたスタッフの配置などが条件となります。
施設運営に関する用語
施設の質や運営状況を判断するための用語も覚えておくと役立ちます。
第三者評価(だいさんしゃひょうか) 外部の評価機関による客観的な施設評価のことです。結果が公表されている場合は、施設選びの参考になります。
運営推進会議(うんえいすいしんかいぎ) 地域密着型サービスでは定期的に開催が義務付けられている会議で、入居者や家族、地域住民、自治体職員などが参加し、サービスの質の向上を図ります。議事録が公開されている場合は、施設の透明性を知る手がかりになります。
情報公表制度(じょうほうこうひょうせいど) 介護サービス事業所の情報を都道府県が公表する制度です。「介護サービス情報公表システム」というウェブサイトで、施設の基本情報やサービス内容を確認できます。
BCP(びーしーぴー) Business Continuity Plan(事業継続計画)の略で、災害や感染症などの非常時でもサービスを継続するための計画です。特に近年は新型コロナウイルス対策としてのBCPが重視されています。
ユニットリーダー(ゆにっとりーだー) ユニットケアを行う施設で、各ユニットのケアを統括する役割を担う職員です。ケアの質に大きく影響するため、経験や研修の有無を確認するとよいでしょう。
サービス担当者会議(さーびすたんとうしゃかいぎ) ケアプランの作成や見直しの際に開かれる会議で、ケアマネジャーを中心に、介護職員、看護師、理学療法士などの専門職が参加します。家族の参加も重要です。
専門用語の活用方法
これらの専門用語を知識として持っておくことで、施設見学や契約時に自信を持って質問したり、説明を理解したりすることができます。ただし、用語を知っていることをアピールするのではなく、「わかりやすく説明してほしい」と率直に伝えることも大切です。
施設選びの際には以下のポイントを心がけましょう:
- わからない用語が出てきたら、その場で質問する
- 専門用語だけでなく、実際のケアの様子も確認する
- パンフレットの言葉よりも、実際のスタッフの対応を重視する
- 契約書や重要事項説明書の専門用語は、具体例を挙げて説明してもらう
専門用語を知ることは大切ですが、最終的には「入居者にとって心地よい環境かどうか」という視点が最も重要です。専門用語の壁に惑わされず、本質を見極める目を養いましょう。
介護の専門用語は年々増え、変化しています。この記事で紹介した用語以外にも、わからない言葉があれば、遠慮なく施設の担当者に質問してください。丁寧に説明してくれる施設は、コミュニケーションを大切にしている証拠とも言えます。
※介護の専門用語や制度についてお悩みの際は、尾形老人ホームアドバイザーにご相談ください。介護現場での経験を活かし、わかりやすい言葉で丁寧に解説いたします。年中無休で8時〜20時まで対応しておりますので、お仕事帰りのご相談も可能です。